
ぽかん口と口呼吸の違いを知り、歯並びへの影響を整理する
ぽかん口(口が開いている状態)がすべて口呼吸とは限らず、まずは鼻づまりの有無や舌・唇の位置を整理することが先決です。 口呼吸のある子どもでは、顔やあごの成長方向に違いがみられるという報告があります。
この記事では、口呼吸と歯並びのかかわりや、家でメモしておきたい昼間と寝ているときの見るポイントをまとめました。原因をひとつに決めつけず、耳鼻咽喉科と歯科のどちらへ何を相談できるかを考える目安としてお使いください。
この記事の要点まとめ
- ぽかん口と口呼吸は同じではなく、舌や唇の位置が歯並びやあごの成長に関わる場合があります。
- 昼間や睡眠中の口元、いびき、鼻づまりを1〜2週間記録すると、受診時の説明に役立ちます。
- 鼻づまりやいびきは耳鼻咽喉科、口元の癖や歯並びは歯科へ相談し、原因に応じた対応を検討します。
- ぽかん口と口呼吸の違いと、舌・唇の位置が歯並びに悪影響を与え得るしくみ
- 家庭で記録したいぽかん口・口呼吸の観察項目
- 原因を一つに決めつけないために知りたい3つの誤解
- 耳鼻咽喉科と歯科へ何を相談できるかの目安
- よくある質問
- 参考文献
- 監修
ぽかん口と口呼吸の違いと、舌・唇の位置が歯並びに悪影響を与え得るしくみ

お口がぽかんとあいている様子と、じっさいに口から息をしている様子は、分けて考えることが大切です。歯は、くちびる・ほお・舌からかかる力がつりあう場所に並ぶため、口もとのゆるみや舌の位置のかわりかたが歯並びへ影響することがあります。
口が開いていても鼻で息をしていることがある
唇が開いているからといって、すべてのお子様が口で息をしているわけではありません。口周りの筋肉が緩んでいる、あるいは習慣として唇を閉じていないだけで、呼吸そのものは鼻で行えているケースもあります。
一方で、アレルギー性鼻炎やアデノイドの肥大などで鼻の通りが悪く、口を開けて息をせざるを得ないケースも存在します。見た目だけで口呼吸と決めつけず、鼻の通りと唇の閉じる力のどちらに要因があるかを分けて見極める視点が求められます。
舌が下がり唇の支えが弱まると前歯と上あごにかかる力が変わる
歯が並ぶ位置は、外側から押さえる唇や頬の力と、内側から支える舌の力のバランスに左右されます。本来、リラックスしているときの舌は上あご(口蓋)に広く触れており、その内向きの支えが上あごの横方向への成長を助けます。
口が開いたままだと、舌がもとの位置より低いところにとどまりやすく(低位舌)、上あごを内側から広げる力が伝わりにくくなります。さらに唇が離れると、前歯を外側から押さえる力も弱まります。口呼吸のあるお子様では、顔の骨の育ち方やかみ合わせのずれと関連がみられるという報告があります1。
研究で報告されている変化と、まだ分かっていないこと
口呼吸のあるお子様では、顔がたて方向に育ちやすい傾向や、上下のあごの前後のバランスにずれがみられ、顔の骨の育ち方やかみ合わせとの関連がみられるという報告があります。また、歯が並ぶアーチ(歯列弓)の幅が狭くなりやすいとする報告もあります2。
ただし、上あごの深さや歯列の幅については研究ごとに結果のばらつきがあり、議論が続いている点も少なくありません2。そのため、口呼吸やぽかん口があれば誰にでも同じような歯列不正が起こると断定することはできません。なお、口が開いて口の中が乾くと、だ液が減って細菌が増え、口臭が強くなることがあるため、日々のケアでも気をつけましょう3。
家庭で記録したいぽかん口・口呼吸の観察項目

病院や歯科へ相談するときは、1〜2週間ほど昼間と寝ているときの様子をメモや写真に残して持っていくと、原因の整理が進みやすくなります。 家で原因を決めるためではなく、医師や歯科医師に普段の様子をありのまま伝えるための手がかりとして残します。
宿題や動画視聴中に見たい唇・舌・姿勢のサイン
日中の様子を確かめるときは、宿題や読書、動画視聴など、お子様が何かに集中している場面を声をかけずにそっと観察します。意識していないときの口元にこそ、普段の習慣や筋力の状態が表れやすいためです。
具体的には、唇がどのくらい開いているか、開いた隙間から舌先が見えていないか、唾液や飲み物を飲み込むときに舌が前歯の間から押し出されていないかを確認します4。また、背中が丸まる猫背や、首が前に出てあごを突き出すような姿勢になっていないかもあわせて見ておくと、口元の緩みとの関連を把握しやすくなります。
就寝時のいびき・口の開き・寝ている姿勢を確かめる
起きているときと寝ているときで口元の様子が異なるお子様もいるため、就寝後の観察も判断材料になります。寝入りばなだけでなく、眠りが深くなった夜中にも口が開いているかを確かめます。
あわせて、毎晩のようにいびきをかいていないか、呼吸が苦しそうになる場面がないか、首を後ろに反らせるような寝姿勢や激しい寝返りがないかを記録します。朝起きたときに唇がカサカサに乾いている、起きてすぐに水を欲しがる、のどの違和感を訴えるといったサインも、睡眠中の口呼吸を疑う手がかりとなります。いびきが目立つ場合は、鼻やのどの確認が優先となることがあります。
鼻づまりがある日とない日を分けて記録する理由
ぽかん口の背景に鼻の疾患があるのか、それとも口周りの習慣があるのかを見分けるには、鼻の通りと口の開き方の関係を記録することが役立ちます。鼻が詰まっている日だけ口が開くのであれば、鼻の要因が強く関わっていると考えられます。
反対に、鼻が通っているときでも、くせのように口があいているなら、唇を閉じる力や舌の位置といったお口の使い方がかかわっているかもしれません。季節ごとの鼻のつまり方や鼻水のようす、昼間に口を閉じて鼻だけで楽に息ができるかをメモしておくと、相談するときに伝えやすくなります。
| 観察する場面 | 家庭で記録しておきたい主なチェック項目 |
|---|---|
| 日中(集中時) | 唇の開き具合、隙間から舌が見えるか、飲み込むときの舌の動き、猫背や頭の位置 |
| 就寝時・起床時 | 寝ている間の口の開き、いびきの有無と頻度、寝姿勢、起床時の口の乾きや水分摂取 |
| 鼻の状態 | 鼻づまりがある日とない日の違い、季節性の有無、口を閉じて鼻呼吸できるか |
上記の項目はすべてを完璧に埋める必要はなく、気づいた曜日や時間帯をスマートフォンにメモする程度で十分です。スマートフォンで正面や横顔の自然な様子を撮影しておくと、言葉では伝えにくい口元の状態を医師と共有しやすくなります。
生え替わり期の前歯の見え方と、注意しすぎない関わり方
小学校低学年の頃は、乳歯から永久歯へと前歯が生え替わる時期にあたります。生えたばかりの永久歯は乳歯よりもサイズが大きいため、一時的に前歯が強調されて見えたり、隙間があいて見えたりすることがあり、家庭での見た目だけで歯列不正と判断するのは困難です。
また、口が開いているのを見つけるたびに「口を閉じて」と繰り返し注意すると、お子様にとって心理的な負担になりかねません。声かけはその場かぎりの対応になりやすいため、まずは注意する回数を減らし、客観的な記録を集めることに目を向ける関わり方が勧められます。
原因を一つに決めつけないために知りたい3つの誤解
ぽかん口や口呼吸を考えるときは、鼻の通り・口まわりの筋肉の力・あごの骨の育ちといういくつかの原因が重なっているかもしれない、と頭に入れておくことが大切です。おうちでの思いこみから自己流の対策をしないよう、よくある3つの誤解をまとめます。
誤解1:口を閉じるよう注意すれば治る
大人が言葉で「口を閉じなさい」と促しても、根本的な解決にはつながりにくいのが実情です。もし鼻炎などで鼻腔が狭くなっている場合、口を閉じてしまうと息が苦しくなるため、お子様は自分の意思では口を閉じ続けることができません。
鼻が通っている場合でも、唇の周りの筋肉(口輪筋)や舌を持ち上げる筋肉の使い方は、無意識の習慣として定着しています4。声かけだけで筋肉のバランスを変えることは難しく、また自己判断で市販の口閉じテープなどを就寝時に使用すると、鼻づまりがある際に呼吸を妨げるおそれがあるため、事前の状態確認が欠かせません。
誤解2:口呼吸があれば歯並びは悪くなる
口呼吸やぽかん口があると、将来かならず歯並びが悪化すると考えて焦りを感じる保護者の方も少なくありません。しかし、歯並びや噛み合わせは、遺伝によるあごの骨格の大きさ、歯そのもののサイズ、指しゃぶりや頬杖といった他の習慣など、多くの要素が絡み合って決まります。
研究においても、口呼吸のお子様にみられる歯列や上あごの形態変化には個人差や議論があることが示されています2。現在の前歯の見え方や噛み合わせが口呼吸によるものなのか、それとも生え替わりや骨格の個性によるものなのかを判断するには、レントゲン等を用いた総合的な診察が必要です。
誤解3:ぽかん口があれば矯正装置が必要になる
口元の緩みや前歯の傾きが気になると、すぐに矯正装置をつける治療を想像しがちですが、装置の使用は数ある選択肢の一つにすぎません。原因が鼻疾患にあれば耳鼻咽喉科での治療が先決となり、口周りの筋肉や舌の癖が主因であれば、お口のトレーニングや生活習慣の見直しから始めるケースもあります4。
乳歯や生え替わりの時期のお子様では、口腔筋機能療法(MFT:舌や唇の正しい位置と動きを身につけるトレーニング)や早めの矯正の関わりが、よい方法になりうると考えられています。ただし、その効果を示す研究の質には、まだ疑問が残るとされています4。そのため、早めに相談してお口のようすを見ておくと、経過を見ながら方法を選ぶ手がかりになります。
ポイント
ぽかん口の背景には、鼻・筋肉・骨格の原因が重なっていることがあります。注意や自己流の対策ではなく、原因に合ったやり方を選ぶことが大切です。
耳鼻咽喉科と歯科へ何を相談できるかの目安
家でつけたメモをもとに、鼻やのどのつらさが目立つときは耳鼻咽喉科、口もとのくせや歯並び・かみ合わせが気になるときは歯科や矯正歯科へと、目あてに合わせて最初の相談先を選びます。 どちらも気になるときは、両方で見てもらいながら確かめていくこともできます。
鼻づまり・いびきが目立つなら耳鼻咽喉科で確認したいこと
観察記録のなかで、鼻が通っている日がほとんどない、季節を問わず鼻水や鼻づまりが続く、毎晩のように大きないびきをかくといった様子がみられる場合は、耳鼻咽喉科への相談が優先されます。物理的に鼻で息ができない状態では、お口のトレーニングを行っても口を閉じることができないためです。
耳鼻咽喉科では、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎の有無、鼻中隔の曲がり、のどの奥にある扁桃やアデノイドの大きさなどを専門的に調べることができます。いつから鼻づまりがあるか、就寝時のいびきや呼吸の様子はどうかといった家庭での記録を伝えることで、診察がスムーズに進みます。
口元の癖や前歯の傾きが気になるなら歯科・矯正歯科で確認できること
鼻は通っているのに日中も口が開いている、飲み込むときに舌が前に出る、前歯が前方に傾いて見える、あるいは顎が鳴る・受け口気味に見えるといった場合は、歯科や小児歯科、矯正歯科での確認が適しています。歯科領域では、むし歯や歯肉炎の有無だけでなく、舌や唇の筋肉の働き(口腔機能発達不全症に関わる項目を含む)や、歯が生えるスペース、噛み合わせのバランスを評価します。
必要に応じて、セファロ(頭部X線規格写真:顔の骨格や成長の方向性を調べるレントゲン)や口腔内スキャナー等を用い、目に見える歯並びだけでなく骨格的な特徴を分析します。そのうえで、経過観察でよいか、口腔筋機能療法(MFT)などのトレーニングを取り入れるか、あるいは成長を利用した小児矯正装置を検討するかといった見通しを立てていきます4。
なお、小児矯正の多くは、保険が使えない自由診療です(国が決めた一部の病気によるかみ合わせの異常などはのぞきます)。費用は、どの段階から始めるか、どんな装置を使うかによって変わります。装置をつけたときの痛みや違和感、みがき残しによるむし歯や歯肉炎、治療のあとに歯が戻ろうとする後戻りといったリスクもあるため、始める前に知っておきましょう。
鴻巣市の当院で、ぽかん口の相談時にお伝えしていること
私たちが目指しているのは、むし歯や歯列不正をただ「治す」ことだけではなく、そもそも大がかりな処置を必要としない口腔環境を育てる医療です。「美しさは、真の予防の鍵である」という理念のもと、見た目の調和と将来の健康を両立させるため、まるでパーソナルトレーナーのようにお子様の成長とご家族に寄り添う伴走者でありたいと私は考えています。
ご相談にお越しになるご家族には、まずは生活習慣やお口の癖への関わりから段階的に考える視点をご説明しています。当院の小児矯正の費用は、プレ矯正(0〜8歳、拡大装置・MFT・プレオルソなどを含む)が150,000円、I期治療(インビザライン・ファーストなど)が600,000円です。プレ矯正を済ませている場合のI期治療は450,000円で、II期治療へ進む場合は250,000円ほどの追加を想定しています。
ポイント
鼻づまりやいびきが主なら耳鼻咽喉科、鼻が通っていても口が開く癖や歯並びが気になるなら歯科へと、観察メモを手がかりに相談先を整理しましょう。
よくある質問
Q. お口ポカンは前歯や歯並びにどんな影響がありますか?
A. 唇が開くと外側から歯を支える力が弱まり、舌も低い位置に下がりやすくなります。口呼吸のあるお子様では、顔の骨の育ち方やかみ合わせのずれと関連がみられるという報告があります1。ただし、歯並びは骨格の遺伝や歯の大きさも関係するため、お口ポカンだけが原因とは限りません。
Q. ぽかん口は成長とともに自然に治りますか?
A. 生え替わりの時期や一時的な鼻づまりによるものであれば、成長や鼻症状の緩和とともに落ち着くこともあります。しかし、口周りの筋力の弱さや舌の位置の癖として定着している場合は自然に変わりにくいため、日中の集中時や就寝時の様子を記録したうえで一度医療機関へ相談することをお勧めします。
Q. 歯科で相談すると、すぐに矯正装置をつけることになりますか?
A. すぐに装置をつけるとは限りません。0〜8歳頃の段階では、まず口呼吸や舌の癖に対するトレーニング(口腔筋機能療法)や生活姿勢の見直し、定期的な経過観察から始めるケースもあります。あごの成長や永久歯のスペースを確認したうえで、必要に応じた選択肢が提案されます。
Q. 小児矯正の費用はどのくらいかかり、保険は使えますか?
A. 当院で子どもの矯正にかかる費用は、プレ矯正(0〜8歳)が150,000円、I期治療が600,000円です。プレ矯正をすませている場合は、I期治療が450,000円になります。また、国が決めたいくつかの病気によるかみ合わせの異常などをのぞき、歯ならびの矯正は保険が使えない自由診療です。
参考文献
1. Zhao Z, Zheng L, Huang X et al. Effects of mouth breathing on facial skeletal development in children: a systematic review and meta-analysis. BMC oral health (2021). PMID: 33691678 / DOI: 10.1186/s12903-021-01458-7
2. Lekvijittada K, Uengkajornkul P, Changsiripun C. Dental arch dimension and palatal morphology in children and adolescents with mouth breathing: a systematic review and meta-analysis. BMC oral health (2026). PMID: 42026531 / DOI: 10.1186/s12903-026-08349-9
3. お口のなんでも相談「口臭」|日本歯科医師会. https://www.jda.or.jp/consultation/vol-06.html
4. Koletsi D, Makou M, Pandis N. Effect of orthodontic management and orofacial muscle training protocols on the correction of myofunctional and myoskeletal problems in developing dentition. A systematic review and meta-analysis. Orthodontics & craniofacial research (2018). PMID: 30152171 / DOI: 10.1111/ocr.12240
鶴見大学歯学部 卒業(Dental Material賞授与)
鶴見大学にて研修後、西麻布にある医療法人に勤めると同時に鶴見大学歯学部矯正科に非常勤専科生となる
鶴見大学歯学部有床義歯補綴学講座 大学院入学
※イタリア フィレンツェにてIADRのポスター発表 [An analysis of properties of microbiota adhered to alloy framework]
歯学博士授与後、鶴見大学有床義歯補綴講座にて学部助手として勤務
学部助手退職後、非常勤講師として所属
非常勤講師として在籍しながら科学研究費の交付を受け、実験研究を行う
都内医療法人銀座院、東京駅前院にて勤務
漆原歯科・矯正歯科クリニック 院長就任
日本抗加齢医学会 会員
鶴見大学非常勤講師
日本顎咬合学会 会員
日本補綴歯科学会認定医
インビザラインドクターライセンス 取得
臨床研修指導医
ジアーズ 会員
日本歯科審美学会 会員
5-D JAPAN 会員
日本口腔インプラント学会 会員
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